配列の種差を調べる

酵素、レセプターのin vitro assayをやる中で、「種差」が問題になることがある。ある化合物がhuman vs. rodent で作用が大きく異ったりする。その時の原因の一つとしては配列が種によって余り保存されていない、ということが挙げられる。

もちろん、assay systemを構築する前準備として配列相同性の情報を収集しておけば良いのだけど、僕がこれまでやっていた方法は結構めんどくさくて(対象の種、human, mouse, ratとかの配列をNCBIから取ってきてからalignment)億劫になっていた。

で、今回見つけたのは「Homologene」NCBIの中のサービス。ここで対象遺伝子(例:GAPDH)を検索するとこんな画面が出てくる。

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様々な種のGAPDHの遺伝子、タンパク質配列がまとめて表示される。下の方をさがしていくと、「Show Pairwise Alignment Scores」というリンクがあって、これをクリックするとアミノ酸配列のidentity (%)がすぐに分かる。すごく楽。NCBIもEMBLもどんどん新しいサービスを増やしてくるから、昔のやり方にこだわることなく新しいものを取り入れていきたいものです。

 

 

論文のロジック

最近、論文を書いています。そして、他のテーマでは論文を見据えたプランを模索しています。昔、お世話になった上司から、薬を作ることと、論文を書くことは同じことだ、という言葉を頂いたことがあります。共に「ロジック」が必要だと。そりゃ、まぁ、言われてみれば当たり前のことかもしれませんが、実際にきちんと意識している人は少ないように思います。

個人的な考えですが、「ロジック」は自分の主張を受け入れさせるために構築するものだと思っています。で、誰に?という点がとても重要だと考えています。論文だとレビュアーですよね。じゃあ、創薬では?というと、誤解を恐れずに書けば、「上の人」になると思っています。どれだけサイエンスベースで正論を述べたとしても、上の方々が承認してくれなかったら先に進めません。

最近論文を書き始めて改めて感じていることですが、自分の主張を順序立てて説明することと同じくらい、その主張を誰に、どんなバックグラウンドの人達にぶつけるのか、ということももっと意識していく必要があるのかなと。プレゼンテーションでは聴衆のレベルに応じて内容を変える様に、論文についてもなかなか読者の顔は見えにくいですが、そのジャーナルの特徴を理解した上でロジックを組み立てられるくらいにはなりたいな、と思います。

今日も思うままに書いてみました。

夏休み

先週末から夏休みで帰省中。しばらく研究からというか実験から離れています。時々、耳にすることがあるのですが、「頭をリフレッシュさせると新しいアイデアが出る」的なものは科学的な裏付けはあるんですかね?個人的にはこの休み中にそんなアイデアがポコポコ出てきてくれることを期待するわけですが。。。で、今回はリフレッシュ→アイデアの件について、個人的な考えを簡単に書いて置きたいと思います。

まず、「リフレッシュ」なんですが、このステップは普段情報の波に晒されて色んな物をインプットした結果、モヤモヤしてしまった頭のなかの情報を脳内で整理させる時間を与えているようなものではないでしょうか。最近、特にその傾向は強いように思うのですが、私たちは情報を集めるというより、勝手に集まってきてしまう環境に身をおいています。当然、消化不良となった情報は脳内で(多分)思考の邪魔をしているんではないかと考えられます。脳の処理スピードが追いついていないんでしょうね。で、休暇に入ると仕事や研究とは離れる中で消化不良の情報もバックグラウンドで処理してもらえた結果、リフレッシュ、ということになる、というのが私の勝手な想像に想像を重ねた印象です。

このリフレッシュ状態から、「アイデアポコポコ」へつなぐためには、記憶の海からお宝を釣り上げる、釣り針のようなものが必要だと思っています。ここで言う釣り針は、「普段やらないようなこと」なんでしょうね。うまく具体例は浮かびませんが。

思うままに書きましたが、結局のところ、休みの間だろうがなんだろうが、考えることを継続することがとても重要でしょう。どういうつながりでそんな結論になるのだろうと思う方が多数いらっしゃると思いますが、それは私の表現力と文章力の無さが原因です。すいません。ほんと、イメージですが、釣り針は色んな種類をたくさん投げ込みたいですし、海のほう海のほうで常に綺麗に保っておきたいなと。そんな感じです。

休みの後半は論文書きに勤しむ予定です。。。

仮説を人にしゃべる、議論する

実験する前提として、仮説を立てる、という作業が必要なわけですが、これがなかなか大変。考えるのは好きなので、モチベーション的な問題はないのですが、私が考える仮説はいつも何処かに針の穴を通すような、ありえるかもしれないけどまぁそんなことないでしょ、みたいなところが出てきてしまいます。で、これは結構深刻だなと思っているのですが、自分で考えていると盛り上がってきてその仮説の危ういところに気づかないというか気づいても見えないふりをしてしまう傾向があります。

こういう問題点を解消するには、頭のなかでこねくり回すよりある程度の段階に来た所で(まとまっていなくても)、他人に話しちゃうのが一番いいと思っています。よくいろんな方がおっしゃっていることですが、自分で声に出して喋ると論理的でない部分が浮き出てくるんですよね。だから、考えるー喋るー破綻箇所に気づいて凹むー考えるを繰り返すことが必要だと思います。

自分的に問題だなぁと思っていることは、仮説を話す相手が少ない、ということ。この辺り、学会なんかでもっといろんな人とコミュニケーションを取っていく必要があるんだろうなーって思います。それが出来れば苦労しないんですけどね。。。

メタボロミクス

今日はメタボロミクスセミナーに参加して来ました。メタボロミクスといえばNatureに今後十年で期待される科学技術にあげられるくらいホットな領域です。私の専門分野からすると、分析技術云々と言うよりは分析後の解析や仮説立案という方が重要なのですが、分析する側の実情を知る意味ではとても有意義なセミナーとなりました。感想をいくつか。

 

最近の創薬研究はバイオマーカー探索に加えて臨床研究で利用可能な診断薬の開発まで自社で担っているらしい。

この流れはなんとなく納得。レスポンダーマーカーとか見つかれば臨床試験のコストを抑えられるし、将来的には医療費の削減も期待できるから薬の付加価値になりますよね。テーラーメード医療を見据えているのかもしれません。

 

メタボロミクスは分析技術としてはかなり固まってきていて、それよりも試験のデザインやサンプル調製の方にバラつきが出そう。

これは実際に分析の現場にいる方にいうと怒られちゃいそうですけど、分析上のバラつきを凌駕するくらいデザインやサンプル準備が重要視されているように感じました。動物を安楽死させてからの代謝変動とか結構バカにならないみたいです。

 

イメージング質量分析というのがある。

これはメジャーなのかもしれないですが、私は結構驚きました。ISHとかIHCの代謝物版、すなわち空間分解能を有した質量分析技術です。これで何ができるとかアイデアはぱっと出ませんがなにかやってみたいなぁって思いました。

 

こういう先端を走っている方々の講演を聞くと、なんだかやる気になりますね。頑張んなきゃなー。

うまくいかない

実験がうまくいかない。何を以って「うまくいかない」のか。

  1. 技術的にうまくいかない
  2. 仮説通りにうまくいかない

1.にしたって2.にしたって一人で考えこむより、他人の目から見てもらうのが一番いいように思う。一人で考えると、たいていハマっていく運命をたどる。個人的には他人と議論することは、自分の考えの無駄を削ぎ、洗練させていくには必要なステップであると思う。

今日、ふと感じたのは2.について。仮説通りにうまくいかないときって、なぜこうも最初に立てた仮説にこだわり続けるのか。仮説を立てて実験することは重要なことだけど、仮説はふとした時には思考のバイアスとして結果の解釈を邪魔することになる。最近、ちらほら見かける「ビッグデータ」的な考え方で行くと、ビッグデータの前には因果関係は必要なくなるのだそうだ。この話が仮説が云々という話と繋がるかどうかはさておき、統計解析のように結果だけから導き出される結論というものにも目を向けるようにしないと大切な発見を見過ごしてしまうことになるかもしれない。

1.の悩みをクリアした大切な実験結果からより多くのことを導き出すために2.のような思考のバイアスに陥らないようにしよう。

今と昔の研究

最近取り組んでいるテーマの中で血中のターゲット分子を測定する系を構築するものがあるのだけど、そのことについて感じたこと。

そのターゲットを測定するためのキットは存在しない。測定するためには大腸菌から粗精製した酵素を使ったカップリング反応を使う。酵素の粗精製は硫安沈殿と超遠心を使った簡単なものではあるものの、ルーチンでやるようなものではないのでひと通りの実験試薬と機器を揃えるだけで結構大変な労力を要しました。やったことは大したことないんだけど、手数を加えた分、測定できた時は満足感がありました。

最近は何でもキットになって売ってるもんで、ほんとに便利な、というか誰でも実験できるよなぁと改めて実感しました。実験の原理がわかっていなくても実験できてしまう。こういう所でも思考停止に陥らないようにしなきゃなぁ。

VaioとMBAの新モデル、物欲が刺激されまくります。でも、今のパソコンでも十分事足りているからなぁ。でもほしいなぁ。。。